『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』
読了したんですが、「良い本だなぁ」と思ったので感想書きます。
(※用語を指す時は【モチベーション3.0】とします。)どんな人にオススメな本?
全人類にオススメ〜!とまでは言わずとも、以下に当てはまる人は読んで損ないかも?
- 会社の管理者側や教師、子を持つ親といった、人を管理したり指導したりする立場にある人
- 自分のモチベーション(仕事に限らず色々な物事に対する意欲)に疑問を持つ人
- 目標に向かって、頑張る方法を知りたい人
めっちゃ要約
アメとムチは前世紀の遺物。【モチベーション3.0】によると二一世紀の職場では、「自律性」「マスタリー」「目的」へとアップグレードが必要。(文庫版 323p 本書の概要 より)
読んでないと「?」って感じですが、ようするに
今の時代はガチガチに管理するより、やりたいことをやりたいようにさせた方がめ〜っちゃ生産性上がるよ!
って感じのお話でした。
モチベーションとは?
本書ではモチベーションを、人を動かすための基本ソフト(PCのOSにならってバージョンがある)としています。
【モチベーション1.0】
飢餓などの生理的・生物的な欲求を満たすための動機づけで、まさしく生きるための行為が初期の人間の行動の動機でした。
【モチベーション2.0】
これは報酬と刑罰、いわゆる飴と鞭を中心に構成されました。
「良いとされるふるまいには報酬を支払い、悪いとされるふるまいには刑罰を与える」、とっても分かりやすいですね。
【モチベーション2.0】は【モチベーション1.0】時代よりも人間の生産性を向上させ、社会を発展させました。
しかし、最近【モチベーション2.0】では説明がつかないことが多くなりました。
機能しなくなってきた【モチベーション2.0】
書籍内で出てきた例がもっとも分かりやすいです。
営利企業であるマイクロソフト社が作ったMSNエンカルタという有料百科事典と、ボランティア頼りの無償提供されるウィキペディア。
前者はサービス終了(2009年)、ウィキペディアは今なお利用される超有名辞典です。
【モチベーション2.0】の考え方ならば、飴も鞭もないウィキペディアがここまで大成功することはありえないのです。
なぜ、【モチベーション2.0】が機能しなくなってきたのか。
【モチベーション2.0】は人間を一律に型に当てはめ管理するため、ルーチンタスクが主だった今までは正当に稼働していました。
ところが、技術革新によりルーチンワークは機械化や自動化が進み、求められる仕事は創造性が必要なものとなりました。
内発的動機づけ、【モチベーション3.0】とは
人間には「学びたい、創造したい、世界を良くしたい」という内部から湧き出る動機づけを本来持っている
アップデートされたモチベーションOSは人間のやる気を上記のように定義します。
【モチベーション2.0】時代のやる気は、活動によって得られる外的報酬と結びついていました。
【モチベーション3.0】では、活動それ自体によって得られる内的な充実感・満足感を報酬としています。
「ピンとこないなぁ」という方はかつての子ども時代を思い出してください。
自分自身が興味を持って「やりたい」ことを、夢中になってやった経験はないでしょうか。
私はお絵描きがそれに該当していて、誰に言われるまでもなくずっと描いていた子どもでした。
(別にそれを生業にはしていませんが、今でも趣味の一つではあります)
【モチベーション3.0】を構成する要素
【モチベーション3.0】は以下の3つで構成されています。
自律性
自己決定的であるかどうか。
本来、人間は自己決定能力を有しています。 課題、時間、手法、チームメイトなどに大きな自律性があるほど、創造性が必要な作業では大きく効率が上がります。
マスタリー(熟達)
何らかの、価値があることへの上達。
自分の能力より低すぎず、高すぎないちょうど良い課題をこなすことで得る感覚(フローというそうです)を重要視しています。
また、マスタリーの道は漸近線のように、どれほど上達を目指しても完全にマスターすることはできないとされます。
プロ中のプロが自身の状態に満足せず、頂点に立っても練習に打ち込む姿を想像してください。
「到達できないけど、目指したい」人生のエンドコンテンツみたいなものです。
目的
人間は本質的に人生の意義や目的を探す。
「自分以外のもの、人、社会などの利益に貢献する永続的な目的を人間は求める」と書籍ではみなしています。
ここ最近は企業の中でも、「営利企業でありながら利益が第一目標ではなく、利益を手段として目的を達成しようとする企業」が見られるようになりました。
また、ソフトウェア関係ではOSS(Open Source Software)が盛んですが、これも「自身以外の何かに貢献したい」という目的のための行動と考えられます。
詳しくは書籍読んでください
【モチベーション3.0】は【モチベーション2.0】のバージョンアップです。
なので、「人間は無償労働できる。」とかいうお話では全くありません。
生物学的欲求を満たすことができた、外的報酬も生活していく上では問題ない程度には得ている…
という状態のそのさらにその先の動機づけということです。
また、【モチベーション2.0】の外的報酬による動機づけも完全に過去の異物として無くすものでもありません。 前述のとおり、ルーチンタスク的作業にはまだまだうまく機能します。
(ただし、うまく【モチベーション3.0】を使えばルーチンタスク的作業を創造的な仕事に変えることもできる、と書籍では語っています。)
ここまで書いてきましたが、私の拙い文章ではあまりうまくまとめられないので、詳しくは書籍を読んでください。
書籍後半では、【モチベーション3.0】をいかにうまく動作させるかを、管理者・自分自身というそれぞれのツールキットとして書かれています。
自分用の要約
- 飴と鞭のように、報酬と刑罰を利用して人間のモチベーションを上げることには限界がある。
- 人間のうちから湧き出る動機を内発的動機付けといい、【モチベーション3.0】とした。
- 【モチベーション3.0】は「自律性」「マスタリー」「目的」で構成されている。
- 個人の立場ならば、自身の目的を見つめ直し、何にフローを感じるかを追求していく。
- 指導者・管理者の立場ならば、コントロールを一部手放してみて、本人のやりたいことをできる環境を整えてあげる。
書籍内でお勧めされた本一覧(一部)
- 『Finite and Infinite Games: A Vision of Life as Play and Possibility』 James P. Carse
- 『究極の鍛錬』 ジョフ・コルヴァン
- 『フロー体験喜びの現象学』 M・チクセントミハイ
- 『人を伸ばす力―内発と自律のすすめ』 エドワード・L. デシ
- 『マインドセット「やればできる! 」の研究』 キャロル・S・ドゥエック
- 『私たち崖っぷち』 ジョシュア・フェリス
- 『Good Work: When Excellence and Ethics Meet』 Howard E Gardner
- 『栄光と狂気―オリンピックに憑かれた男たち。』 デイビッド ハルバースタム
- 『天才! 成功する人々の法則』 マルコム・グラッドウェル
- 『リンカーン』 ドリス・カーンズ・グッドウィン
- 『報酬主義をこえて』 アルフィ・コーン
- 『Once a Runner: A Novel』 John L. Parker Jr.
- 『やりとげる力』 スティーヴン プレスフィールド
- 『セムラーイズム 全員参加の経営革命』 リカルド・セムラー
- 『最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か』 ピーター・M. センゲ
- 『バカをつくる学校』 ジョン・テイラー・ガット
- 『子どもが体験するべき50の危険なこと』 Gever Tulley
いくつか面白そうな本があるので、読んでみたいところ。
(『子どもが体験するべき50の危険なこと』は最近ちょっと話題になってた気がする)